勝谷情報
紅色品種の改良

 それからしばらくして,大輪や小輪,一重や八重の種々の花型に分離(C)したブラウンのトルコギキョウを生産者の圃場でよく見かけるようになった。この頃に,ブラウンの品種は千葉県の佐瀬昇氏が最初に育成し,同時に「サカタのタネ」が品種化の共同開発者であることを知った。恥ずかしながら,私は新しい花色であるブラウンの花弁ばかりに注目していたので,緑色とブラウン品種の共通事項である雌ずい(柱頭)が変形し,閉じたままであることに気付かなかった。
不思議なことに,国内各地の個人育種家の温室の中で,同様に変形した雌ずいを持つ品種が,独立した交雑系で出現するようになった。かつて覆輪品種が全国各地の生産者でほぼ同時期に出現したように,トルコギキョウでは交雑が進む過程で,種々の花色や形態が同時期に出現するのであろう。しかし,その価値を誰よりも早く見抜く眼力を有する生産者こそが先導的な育種家である。

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IWAD環境福祉専門学校
 みどりの環境学科
教授  勝谷 範敏

今から10数年前のことであるが,福島県の友人(生産者)から花弁が厚くて緑色のトルコギキョウ(A)が届いた。触ると,プラスチックのようにカサカサと音を立てていた。このようなタイプのトルコギキョウはそれまでに見たことがなく,衝撃的であった。
ところがこの頃には,同様なタイプで,花弁が厚いブラウンの品種(B)が既に生産者段階で育成されていた。初めてこのブラウン
(茶色)品種を見た生産者から,「まるでタワシが咲いているようであった」という話を聞いたことがある。